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2017年6月15日木曜日

【「忖度」は日本人にしか理解できない?】

いまマスコミで流行中の「忖度」という言葉。これが外国人特派員に上手く説明できないとか、そもそも「忖度」にあてる訳語がないとか、あたかも日本独自のものであるかのように語られているが、果たして本当にそうなのだろうか?

広辞苑には「他人の心中をおしはかること。推察」、明鏡国語辞典には「他人の気持ちをおしはかること」とある。他人の心中や気持ちをおしはかるということは、我々のご先祖様がライバルであったネアンデルタール人に競り勝ち、ホモ・サピエンスを万物の霊長に押し上げた重要な能力であったことは人類学の常識だ。
ならば忖度は極めてポジティブな概念であり、人類にとって最も重要かつ基本的な機能であった筈。他民族が持っていなくて、日本人だけが持っているというのでは筋が通らない。

また、よく企業でも役所でも「指示待ち人間になるな」とか「仕事は持ち込まれるものではなく自分で作るものだ」と喧伝されている。つまり命令を待つことなく独自の判断で動けということなのだが、各現場が思い思いの判断で独断専行するのであれば組織も戦略もあったものではなくなってしまう。そこで当然、現場は最高統帥を忖度しつつ独断専行することにならざるを得ない。

畢竟、マスコミで俎上に載せられている「忖度」は、「権力者の意思を忖度したうえで権力者の意に沿う為に自らの判断で動くこと」という本来の日本語にもない複雑怪奇な概念を担わされている訳で、これを外国人に一言で説明できないのは当たり前の話である。

ただ、この「忖度」現象が日本独自のものかというとそうでもない。最近のトピックだけで見てみても、例えば北朝鮮による金正男暗殺事件。複数の謀略組織による功名争いによるもので、所謂「忖度」による事件であった可能性が大であることは多数の専門家によって観測されている(詳しくは『軍事研究』バックナンバーを見て頂きたい)。

また米国のロシアゲート事件。これはトランプ大統領がコミーFBI長官に「忖度」を期待したにも拘わらず、長官が敢えて「忖度」しなかったことによって出来した事件であり、米国でも「忖度」が起こりうることの証明に他ならない。

事ほど左様に、忖度という概念も「忖度」という現象も日本独自のものではなく万国共通のものであるにも拘らず、日本がユニークな国であるという「印象操作」がなされることが極めて多い。そのことこそが本当の日本の病理と言えるのではないだろうか。

例えば日本だけが四季がはっきりとある美しい国であるとか、日本だけが明治維新という無血革命を成し遂げられた国であるとか、日本だけが天皇制という神代から続く王朝を維持できている国であるとか…。または日本語は論理的な思考が出来ない言語であるとか、旧日本軍だけが慰安婦という制度を持った異常な国であるとか…。
右翼がポジティブに見るにせよ、左翼がネガティブに見るにせよ、事実に目を背け「日本ユニーク論」を論じ続けることで悦に入っているようはこの国に未来はない。そのことだけは確実に言えるのではないだろうか。

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